IT系の新入社員研修に参加して思うこと――「こなす」から「考える」へ

先日、あるIT企業の新入社員研修に、サブ講師として数日間参加してきました。

普段はライフコーチングやICT相談役として、個人や中小企業の方々と向き合う仕事が中心です。そんな私が、若い社会人たちと同じ部屋で過ごしたこの経験は、改めて「人が育つとはどういうことか」を考えさせてくれるものでした。

今回はその経験を徒然なるままに書いていきます。

技術研修なのに、技術が主役じゃない

今回の研修は、プロジェクトベースドラーニング(PBL)という手法で設計されていました。

受講生はチームに分かれ、擬似的なシステム関連プロジェクトを進めます。(今回はインフラ寄りのプロジェクト進行でした。)技術や知識の定着はもちろんあるのですが、メインの学習テーマは**「仕事の進め方」と「チームとしての在り方」**です。

  • タスクの優先順位をどうつけるか
  • メンバーと意見が食い違ったときにどう動くか
  • 「わからない」をどのタイミングで、どう伝えるか
  • 計画がズレたとき、どう立て直すか

技術的な知識は、あくまでそれを実践するための素材に過ぎません。正直に言えば、「これは技術研修という名のチームビルディング&思考力トレーニング」です。

こういった研修設計は、IT業界でも広がってきています。なぜなら、現場で本当に困るのは「わからない・できない」よりも「考えて動けない」「伝えられない」「巻き込めない」ことだからです。

サブ講師として入って気づいたこと

私の役割はサブ講師、つまり補佐的なポジションです。メイン講師がいて、私はチームを巡回しながら様子を見る。何かあれば声をかけ、詰まっているようなら少しだけ問いかける。

これが、普段のコーチングと本質的によく似ているんですね。

コーチングでは、答えをクライアントに手渡すことはしません。クライアント自身が考え、気づき、選択するのを見守ります。サブ講師としての関わり方も、その延長線上にありました。

「教える」のではなく、「気づかせる」。「引き上げる」のではなく、「隣に立つ」。

そういう感覚です。

ただ、ひとつ気になることがありました。

受講生は「こなすこと」に夢中になる

PBLの現場を見ていると、受講生たちは課題の完成に集中するあまり、「なぜそうするのか」を考える余裕を失いがちです。

「このタスク、どうやれば終わるか」は考えている。でも「このタスク、なぜやるのか」「チームとしてどう動くべきか」は後回しになっていく。

目の前のToDoをつぶすことが目的になってしまうんですね。

これ、社会人あるあるでもあります。新人に限らず、経験を積んだビジネスパーソンでも同じ構造に陥ることは珍しくありません。日々の業務をこなすことに追われて、「そもそも何のためにやっているのか」を見失う。

IT研修の場でも同じことが起きていました。

技術を学ぶことが目的になり、その技術を使って「どんな仕事をするのか」「誰の役に立てるのか」というレイヤーの問いが薄くなっていく。

問いかけると、止まる。止まると、見える。

チームを巡回しながら、私はこんな問いかけをしてみました。

「今チームで一番困っていること、何だと思う?」

「このやり方、誰かに確認した?」

「もし明日が締め切りだったら、今日何を優先する?」

すると、受講生たちは一瞬止まります。手が止まる。画面から目が離れる。

そしてしばらくすると、チームで話し始める。

この「止まる」という瞬間がとても大切だと思っています。作業の流れを止めて、自分たちが今どこにいるかを確認する。それだけで、ちょっとだけ視点が上がる。

コーチングでいう「メタ視点」です。

問いかけ一つで、受講生たちは確実に変化していました。それが課題の完成度に直結するかどうかは別として、「考えた」という体験が残る。これが、社会人としての土台になっていくのだと思います。

IT研修が「人を育てる場」になるために

IT研修の現場で感じたのは、技術を伝える効率と、人として育てる深さは、必ずしも同じ方向を向かないということです。

効率よく技術を習得させたいなら、手順を教えて模倣させればいい。でも、変化の早いIT業界で長く活躍できる人材を育てたいなら、「考える筋力」を鍛える機会が必要です。

それはPBLという手法の中にあるし、サブ講師や上司の関わり方の中にもある。「教える」ではなく「問いかける」「見守る」「一緒に考える」という姿勢が、その筋力を育てます。

コーチングはその典型的なアプローチですが、コーチングの考え方は研修の場にも、日常の職場でも応用できます。

IT研修担当者や経営者の方に伝えたいのは、カリキュラムの中身だけでなく、関わる大人のスタンスが研修の質を大きく左右するということです。

受講生が「自分で考えた」と感じられる体験をどれだけ作れるか。そこが問われています。

ICT活用と「考える人」を育てること

私はICT相談役として、中小企業のIT活用を支援する仕事もしています。

ツールを導入することは簡単です。でも、ツールを使いこなして業務を変えていくのは、結局「人」です。ITが苦手という前に、「どう使いたいか」を自分で考えられるかどうかが問われる。

新入社員研修で感じたことと、ICT相談の現場で感じることは、実は同じ根っこにあります。

物事を本質から考える習慣。これが、IT研修でも、ICT活用でも、そしてライフコーチングでも、私が大切にしていることです。

中小企業のICT活用について、一緒に考えてみたい方はこちらもご覧ください。

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まとめ

IT系の新入社員研修にサブ講師として参加し、改めて感じたことを書いてきました。

  • PBLという手法は、技術より「仕事の進め方」「チームとしての在り方」を学ぶ場
  • 受講生は課題をこなすことに夢中になりがちで、「なぜ」を考える余裕を失いやすい
  • 問いかけひとつで受講生は止まり、視点が上がる
  • 研修の質は、カリキュラムだけでなく「関わる大人のスタンス」が左右する
  • 物事を本質から考える習慣が、IT研修でもICT活用でもコーチングでも共通して大切

「こなす」から「考える」へ。この一歩が、人の成長を大きく変えます。

もし、そういう力を自分や組織の中で育てていきたいとお感じであれば、コーチングの無料体験セッションからお話しませんか。

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Author

有田 卓也

徹楽・ライフコーチ / ITエンジニア

1981年、兵庫県尼崎市生まれ。「自分との約束を果たす旅〜Self Bridge〜」と題したコーチングプログラムを通して、 行動と変容を実践。また、資格に拘らない、コーチングの本質的なセッション力強化にも力を入れています。

年に1回・新月の日に開催される4席限定の沖縄リトリート「原点回帰の旅」を通じて、仕事と楽しむことを両立。 どれも席数が少なく「路地裏の名店」と言われます。

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