コーチングのゴールは、コーチがいらなくなることではないか
「コーチングのゴールは、コーチがいらなくなることではないか」
この言葉は、少し上手く言い表せていないかもしれません。批判的に聞こえるかもしれないし、違う意見を持つ人もいらっしゃるでしょう。
実際には、コーチが必要か不要かを、二つに分けて考える必要はありません。長く対話を続けることで扱えるテーマもあります。大きな転機や難しい局面で、あらためてコーチを頼ることもあります。
ただ、私が大切だと思うのは、コーチを持ち続けること自体が目的にならないことです。
迷ったときに自分で立ち止まる。いま何を問うているかに気づく。別の見方を探し、自分が納得できる方向を選ぶ。そして、現実で試して振り返る。
その力が少しずつ自分のものになれば、支援が必要かどうかも、自分で選べるようになります。
コーチングビジネスの怪しさだったり、依存性だったり、そういったものに繋がっていそうな懸念として、コーチング関係を終了する というゴールについても考えていいと思っています。
セルフコーチングとは何か
セルフコーチングにはさまざまな定義があります。ここでは、自分に問いを立て、考えを観察し、選択と行動を振り返る一連の実践として捉えます。
一人で自問自答するだけではありません。
- いま何が起きているかを、事実と解釈に分ける
- 自分は何を大切にしたいのかを確かめる
- いつもの考え方以外に、どんな見方があるか探す
- 次に試す一歩を自分で選ぶ
- 行動した結果から学び、問いを更新する
この循環を、自分の日常の中で扱えるようにしていくことです。
セルフコーチングができる人は、迷わない人ではありません。迷いが生まれたときに、誰かが答えをくれるまで止まるのではなく、自分の問いへ戻れる人です。
コーチングは、答えを預ける場所ではない
国際コーチング連盟(ICF)は、コーチングを、クライアントの可能性を最大化するための、思考を促す創造的なパートナーシップとして定義しています。
パートナーシップである以上、コーチが一方的に正解を示し、クライアントが従う関係ではありません。
コーチは問いを投げ、観察したことを返し、見落としていた前提や可能性に気づくための対話をつくります。しかし、何を選ぶか、何を実践するか、その結果をどう受け止めるかは、クライアント自身が引き受けます。
もしコーチが毎回答えを決め、クライアントが判断を預け続けるなら、それは自分で選ぶ力を育てる関係から離れていきます。
コーチングの価値は、答えをもらえることだけではなく、答えを見つける過程を自分で扱えるようになることにもあります。
対話の中で身につけたい5つの動き
1. 立ち止まる
急いで結論を出す前に、自分の思考・感情・身体の反応を観察します。
2. 問いと前提に気づく
「失敗してはいけない」「期待に応えなければならない」など、選択を狭めている前提がないかを見ます。
3. 可能性をひらく
すぐに一つへ絞らず、別の見方や、まだ選んでいない選択肢を探します。
4. 自分で選ぶ
誰かの正解ではなく、自分が大切にしたいことに照らして方向を決めます。
5. 現実で試し、学ぶ
選んだ答えを小さく行動に移し、結果から次の問いをつくります。
この五つは、順番どおりに進む固定プログラムではありません。状況に応じて行き来しながら、自分で扱える範囲を増やしていくものです。
一人でできるなら、コーチは不要なのか
ここで、「では、最初から一人で考えればよいのでは」と感じる人もいるでしょう。
一人で考えられることは、たくさんあります。一方で、自分の前提は自分にとって当たり前すぎて、見えにくいものです。同じ問いを何度も繰り返し、同じ答えへ戻ってしまうこともあります。
第三者との対話には、自分一人では見えにくいものを映す役割があります。
それは、答えを代行するためではありません。自分で考えられる範囲を広げるためです。
自律とは、一切他人に頼らないことではありません。自分の状態を見て、必要な支援を選び、その支援をどう使うかも自分で決められることです。
病気になれば医療の専門家を頼ります。法律や会計の判断で専門家に相談することもあります。同じように、答えのない問いを扱うとき、対話の専門家を必要な期間だけ使うことがあっても、自律と矛盾しません。
「卒業」と「再び利用する自由」は両立する
コーチングから卒業することは、二度とコーチングを受けないと決めることではありません。
いま扱っているテーマについて、自分で問い直し、選び、進める状態になった。だから、いったん区切る。その後、環境や役割が変わり、新しい問いが生まれたときに、また対話を使う。
そうした関係のほうが、支援を惰性ではなく目的に応じて選べます。
長く続けることにも、短く終えることにも、それだけで優劣はありません。大切なのは、「なぜ続けるのか」「何が変わったら区切るのか」を、コーチとクライアントが言葉にできていることです。
自分で問い直す力を育てる
コーチングのゴールを一言で決めることはできません。テーマも、期間も、目指す状態も、人によって違います。
それでも、Self Bridgeが目指す方向は明確です。
セッションの時間だけ前向きになるのではなく、日常で迷ったときに、自分で立ち止まり、問い直し、可能性を考え、納得できる方向を選べるようになること。
コーチを持ち続けるためではなく、自分で問い直す力を育てるために、必要な期間だけ対話を使う。
いまのあなたに必要なのは、答えでしょうか。それとも、自分で答えを見つけていくための新しい問いでしょうか。
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参考


